世界遺産に登録された韮山反射炉。
どうしても“世界遺産”が一人歩きしてしまい、あまりフィーチャーされませんが、ここ韮山には、「江川家」という日本の礎を築いた江川太郎左衛門英龍-坦庵-(1801〜1855)という人物がいます。
900年前の大和源氏の末裔から続き、5代にわたって北条氏の家臣を経るなど、脈々と受け継がれてきた江川家。
特に、江戸後期の名代官として知られる36代英龍は、列強諸国に対抗すべく、韮山反射炉ならびにお台場の建設、日本で最初の洋式帆船建造(戸田号)、パン製造など数多くの業績を残しました。
そんな歴史がたっぷり詰まった「江川邸」の見どころ・アクセス・料金などを徹底解説していきます!
セットで行くのがオススメ!
Contents
国指定重要文化財「江川邸」とは
江川邸(江川家住宅)とは、厳密には「重要文化財江川家住宅と史跡韮山役所跡」を指します。
江川邸は、歴史的な価値はもちろんのこと、多くの建築家を唸らせる建物としての魅力もたっぷり詰まっています。
また、NHK大河ドラマ 「篤姫」、TBS系日曜劇場「JIN-仁」、最近では同じくNHK大河ドラマ「西郷どん」のロケ地としても起用されています。
そして同時に、今日の現代日本があるのは江川英龍の功績を語らずにいられません。世界遺産「韮山反射炉」とセットで回ることをオススメします!
江川邸(江川家住宅) 概要
母屋の面積は552㎡(約167坪) - 桁行13間(約24m)、梁行10間(約18m)、棟高約12m - の単層入母屋造の建物です。この母屋に対し、土間はなんと約3分の1を占める165㎡(50坪)。
小屋組づくりと呼ばれる免震構造の屋根裏の木組みなど、改修工事はされているものの、室町時代(1334年〜1573年)から1600年頃に修築された建物と、その部材は現在も健在しています。
また、この母屋に付属する、書院や仏間、門、蔵、塀、鎮守社、敷地(1183㎡)が国の重要文化財に指定されています。
細かい概要や歴史などについては公式サイトをご覧ください。
国指定重要文化財「江川邸」見どころ解説
駐車場には「伊豆の国歴史ガイドの会」歴史の研究サークルによるボランティアガイドが常駐しています。無料で邸内や主屋の案内をしてくれるので、来たからにはお願いするのがオススメです。
反射炉が世界遺産に登録されたため、予約数も増えているようです。余裕があれば予約しておくと確実です!
入口(券売所)
矢印に沿って民家を少し進むと、正門(入口)が見えて来ます。駐車場からは1分ぐらいです。まずは入り口でチケット購入。お決まりのスタンプもあります。
韮山反射炉と同様、8ヶ国語に対応する「Guidoor」が利用できます。
現在も子孫はご健在ですが、江川家はかなり古い歴史を持っています。
その歴史はなんと平安時代まで遡ります。修繕しているとはいえ、母屋は火事や天災の被害に遭うことなく室町時代からなので驚きです。
表門
券売所から母屋に向かう「表門」です。表門は元禄9年(1696)に建築された薬医門で、文政6年(1823)と平成12年に屋根の葺き替え等の修繕が施されています。
ここをまっすぐ進むと、玄関(※冒頭に掲載した画像)が見えて来ます。ここが大河ドラマ「篤姫」で使われたそうです。
敷地内には、自生している竹なども含め、木々が植えられ、四季折々の表情を見せてくれます。
母屋
表門から順序通りに進み、いよいよ母屋に入っていきます。
土間
これが50坪(162㎡)もの土間です。※入口と反対側から撮影
まさにここで、歴史的な偉人たちの胃袋を支えていた食べ物を作ったり、人々が行き交っていていたのかと思うと、感慨深いですね。
生き柱(左図)は、江川氏がこの地に移り住んで来た際、生えていたけやきの木をそのまま利用したそうです。
構造的には柱としての意味をなしていないそうですが、建物より古くずっと歴史を見て来た柱です。右図が大黒柱ですね。
そして土間に入った瞬間圧巻なのは、屋根裏の架構です。
棟高約12mもあるため、迫力が凄いです。この小屋組の屋根を見ているだけでも、当時の匠の技に感銘を受けます。
土間には、パン焼き窯を形作っていた伊豆石の展示もされています。
ちなみに、江川太郎左衛門英龍(坦庵-たんなん-)は「パン祖」と言われており、日本で初めてパンを焼いた人物とされています。
そしてこちらが台所です。
改修されているとは思いますが、板張りと囲炉裏が年季を感じます。
展示物の数々
前述しましたが、ガイドをつけたほうが、裏話なども聞けるのでオススメです。
これだけの資料が無傷で状態残っているのは、子孫の方々や地域の協力があってこそですね。
英龍は代官としての素質だけでなく、学問や芸術の見識も深かったそうです。
これらの作品は、季節によって変えるそうです。
江川塾の偉人たち
母屋内北東の「じゅくの間」にて、江川塾を開いていました。大山巌・黒田清隆・佐久間象山・大鳥圭介・
この部屋では、江川家にまつわる様々な文献や資料がまとめられています。
新聞の切り抜きなどもあるので、プラスアルファの知識を増やしたい方にいいかもしれないですね。
玄関からの眺め
ガイドさんのご好意で、玄関からの眺めを見せていただきました。
少しわかりにくいですが、玄関は表門から斜めの構造となっており、狙われにくくする(まっすぐだと矢などが飛んで来やすい)などの理由があるそうです。
建物の構造一つでも、先人たちの叡智が詰まっているんですね。
南米蔵・北米蔵
米蔵は明治(1892)と大正(1919)に建築された比較的新しい建物です。
ほんの一部ですが、内部は農機具や鉄砲などの展示スペースになっています。
敷地内には、幕末に建てられた「西蔵」と、農兵が用いた鉄砲や火薬の原料などを保管していた「武器庫」があります。
パン祖の碑
江川英龍(坦庵)は、天保13年(1842)頃、保存のできるパンを兵糧として用いようと考えました。現在の柔らかいパンではなく、乾パンのようなものだったようです。
配下の者に製造法を学ばせ、この場で実際にパン釜を用いて焼いたのが、日本で初めてのパンと言われています。
この石碑は、そんな江川英龍(坦庵)を讃え、昭和28年に全国パン協会によって建てられました。
追記:パン祖のパン祭が毎年1月中旬に開催
「パン祖のパン祭」は、日本ではじめてパンを作った、伊豆韮山代官こと、江川太郎左衛門英龍公(江川坦庵公)の功績を讃え、1月第3週の土日、2日間にわたって開催されるイベントです。
市内はもちろんのこと、全国各地の人気のベーカリーが出展します。また、パン職人コンテストや、地元高校生による巨大パンオブジェの展示、参加・体験型のイベントコーナー、抽選会やその他様々な催しで賑わいます。
駐車場には限りがあるものの、第2駐車場(小学校なども開放します)含めれば、ある程度余裕はあります。その場合は多少歩く必要はありますが、シルバー人材センターなどによる交通案内もしてくれているので、遠方からでも比較的安心です。
午前中がメインのイベントなので、お昼ギリギリなどは入れ替わりが多く狙い目です。
祭り名 | パン祖のパン祭 |
開催場所 | 伊豆の国市韮山文化センター |
開催日 | 毎年1月第3週土・日曜日 ※10:00~14:30 |
住所 | 静岡県伊豆の国市四日町772 |
主催者・運営 | 伊豆の国パン祖のパン祭実行委員会 |
お問い合わせ | 0558-76-8003 |
最寄り駅 | 韮山駅 |
裏門
裏門は最も古い部材を使用しているそうです。天正18年(1590年)に豊臣秀吉秀吉の小田原攻めで、韮山城も包囲されました。砦での一つだった江川邸も激しい攻撃を受け、その当時の鉄砲玉や矢じりの跡も残っているとされています。
裏門自体の建築は、文政6年(1823)です。
実は本施設、見どころにはしっかり番号が振られていて、パンフレット内に順序も記載されています。
また、公式サイトにも画像つきで説明されているので、当サイトで掲載されているのが全てではありません。ぜひご自分の足で赴いてくださいね。
カメラレビュー用の短い動画です。ロケ地は今回の「江川邸」です。雰囲気はつかめると思いますのでお時間があればどうぞ。
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江川邸基本データ
料金
入場券 | 一般 | 団体 | 小中学生 | 小中団体 | 市内一般 | 市内小中 |
単独 | 500 | 400 | 300 | 200 | 400 | 200 |
共通 | 700 | 700 | 250 | 250 | 700 | 250 |
開館時間
開館時間
9:00~16:30(受付16:15まで)
※水曜日は9:30~15:00
アクセス
車でお越しの場合
沼津ICー伊豆縦貫道「大場・函南IC」→国道136号線→修善寺方面に左折(所要25分)
電車でお越しの場合
東海道新幹線「三島駅」→伊豆箱根鉄道「韮山駅」(三島〜韮山駅間 所要20分)
駐車場
あり(無料)
江川邸公開事務室
所在地:〒410-2143 静岡県伊豆の国市韮山韮山1
TEL:055-940-2200
FAX:055-940-2201
あとがき
江川邸から 城池・親水公園 、 韮山城跡、菩提寺の本立寺 などを含めれば、膨大な敷地面積を誇ります。
周りには何もないど田舎ですが、歴史探訪してみるのも面白いですよ!
セットで行くのがオススメ!